八ヶ岳(にゅう〜天狗岳)
快晴の下、展望に恵まれ、とても楽しい山歩きでした。
天狗岳頂上より西天狗岳を望む。
夜空は、その大半が雲で覆い尽くされ、
瞬く星が雲の合間から僅かに覗くだけだった。
八ヶ岳方面はどうだろう?
雲があったとしても、それほど厚くはないだろう。
早い時間に上まで登れば、雲海が見られるかもしれない。
ずっと下道を走ってきたが、存外早く、登山口である稲子湯に着いた。
コンビニに途中寄ってはみたが、約2時間で着いた。
このくらいで着くのなら、もっと八ヶ岳に足を運んでもいいな。
もっとも、八ヶ岳も大きい。
すべてが、この時間でアプローチできるわけではないけど…。
稲子湯に着き、綺麗な空気を吸い込んだ。
思ったよりも空気は冷たくない。
樹々の色付きもまだまだこれからといった風情だ。
駐車の受付を済ませ、軽く体をほぐして、直に出発する。
稲子湯から通ずる登山道は、その脇に苔が多く見られ、
いかにも八ヶ岳といった雰囲気を見せていた。
白駒池方面に繋がる、しゃくなげ尾根に取り付くと、
そこは落葉の重なる登山道となっていた。
最初は細い登山道だった筈の道も、いつの間にか林道になっていた。
そこは道一面に落葉が降り積もり、とてもやわらかい感じがした。
その林道も僅かの間だけだった。
直に狭い登山道となる。
しゃくなげ尾根の名前の通り、しゃくなげの葉がとても多い道だった。
初夏には、きっとすごく綺麗だろう。
当然のことながら、その道はしゃくなげはもちろん多いが、
ここでも苔むす感じの風景がとてもよく目につく。
太古のままの自然が感じられ、何かの”精”にでも遇いそうな気がしてくる。
稲子湯を出て、1時間ちょっとすると、ダケカンバ越しに”にゅう”と思しき、
ピークが見えてきた。
太古のままの森の中の歩きも楽しいが、そろそろ開けた景色が見たくなってきた頃、
この景色の変化は少し嬉しかった。
そして、振り返ると、硫黄岳が大きな姿を見せ始めた。
青空もとても綺麗だ。
これは、”にゅう”迄行けば、展望が楽しめるかもしれない。
それにしても、この道は苔が多い。
右も見ても、左を見ても、必ず苔が目に入る。
鮮やかな色の苔が本当に綺麗。
朽ちた木に落ちる葉はひなたぼっこしてるかのようだ。
分岐点で見た標識。
”ニュー中山峠”って…。
なんだかドライブインみたいだ…。(笑)
区切りを入れるとか、もうちょっとなんとかした方が…。
明るい感じの森や鬱蒼とした感じの森をくぐり抜け、
主稜線とでも言うべき稜線にでると、
”にゅう”の頂上が左手に見えた。
そこはとても小さなピークだった。
けれど、そこでの展望は抜群!
360°遮るもののない展望は本当に素晴らしい。
北に目を見遣れば、白駒池、高見石、北八ヶ岳の山々の向こうに
北アルプスの峻険な嶺々がはっきりと見える。
浅間山は雲海の上に頭を出している。
そして、南に目を見遣れば、富士山がこれまた雲海の上に頭を出す。
秩父連山だって雲海の上に頭を見せている。
本当に抜群の展望。
遮るもののない素晴らしい眺望は、近くの山の存在を俄に忘れさせてしまう。
希望的観測通りの、雲海の上の嶺々の姿を堪能した後、
天狗岳方面に向かう。
基本的に、この日の予定は行けるところまで。
最低限、天狗岳までは行くつもりだが、できれば硫黄岳往復も
してみたいとは思っていた。
なので、長居はせずに歩き出す。
天狗岳方面に向かってすぐのところから”にゅう”を見る。
知ってはいたが、南側は絶壁だ!
そこから、天狗岳(右側の双耳峰)方面を見る。
硫黄岳まではさすがに遠い…。
思いの外、細かなアップ・ダウンの多い稜線をゆく。
木々の茂る様は、”にゅう”までの登山道と大きな違いはないように思える。
黙々と歩いてゆくと、前方の視界が開ける。
東天狗(右)と硫黄岳(左)。
東天狗の姿が思ったよりも勇ましく、カッコいい。
天狗ノ奥庭近辺の溶岩台地から北アルプス方面を望む。
槍や穂高、乗鞍が見える。
遠くばかり見ていて全然気付かなかったが、いつの間にか
ハイマツが目につくようになっていた。
そう言えば、今年ハイマツを初めてみたような…。
ちょっとは高いところに来たことを実感する。
それにしても、爽やかで、とてもいい天気。
時間があれば昼寝したくなるような、すごくいい場所だ。
天狗の庭ではなく、俺の庭にしたいくらいだ。(笑)
蓼科山もひょっこり頭を見せている。
その場から少し登ると…、
溶岩台地が一望できる。
たしかに天狗がいるような…、いないような…。
でも、いい感じの場所だから、天狗もいるかな。(笑)
展望を楽しみながら歩いてゆくと、いつしかルートは岩だらけとなる。
そして、多くの登山者の声がきこえるようになる。
その声の中に吸い込まれるように登ってゆくと、東天狗岳頂上だった。
ここでも登山者の平均年齢はかなり高めのようだが…、
かなりの登山者で賑わいをみせている。
ここで昼飯を食べようと思ったが、人の多さに閉口し、
人が少なそうに見える西天狗岳の方に向かうことにする。
東天狗岳から約10分で西天狗岳に到着。赤岳、阿弥陀岳が美しい。
岩でできた東に比べ、西は土でできているような感じで、
朝降りたであろう霜柱が融け、頂上の標柱まわりはぬかるんでいた。
こちらは東と比べ、全然人が少ない。
こちらでの昼飯として正解だったようだ。
斜面南に陣取ると、ポカポカ陽気で、とても過ごし易い感じ。
なので、昼飯をノンビリ食べることにした。
南アルプスの嶺々がとてもよく見える。
中央アルプス、御嶽山もよく見える。
東に劣らず、こちらでの展望も素晴らしい。
秋の日の澄んだ空気の中、存分に展望を楽しんだ。
東天狗を見ると、頂上は大賑わいだった。
途中でパスした団体パーティが東天狗に到着したらしく、
頂上はとんでもない状況になっているようだった。
東天狗岳から根石岳につづく稜線を歩く人々が見える。
その向こうには、野辺山だろうか?遠くに里が見える気がした。
昼飯を食べ、東天狗岳に戻ると…、
果たして、こちらはとんでもないことになっていた。
頂上は人で溢れ、もはや登山道さえない状態。
足を出す場がない…。
そんな中をかき分け、根石岳方面へ向かう。
稲子岳方面を見遣ると、今朝登ってきた”にゅう”がちょこんと見えた。
(”にゅう”は中央左上のちょこんとした岩のように見える所です。)
結構歩いたんだなぁ。
東天狗岳から根石岳に向かうルートには、こんな足場ができている。
この反対側の斜面からは、カラカラという不気味な音がしている。
小規模な自然崩落が絶えず起きているようだ。
危険な場所に長居は無用。
そそくさと根石岳方面に向かう。
斜面を下りつつ、西天狗を振り返る。
人が少なく、地味だけど、案外カッコいい。
西天狗岳(左)と東天狗岳(右)。
こんな位置関係。
往復30分もかからないので、ここまで来たら、両方に行くことをお勧めします。
東天狗岳と根石岳の鞍部で。
東天狗岳は混んでいることが多いようなので、
こうやって静かな所で休むのがいいかもしれない。
こちらの展望も決して悪いわけじゃないし…。
根石山荘と西天狗岳
こちらの山荘、風呂があるらしい。
天狗岳だけでなく、眼前には北アルプスが遠望でき、
ロケーションとしてはかなりいいと思われる。
この展望を楽しめるようなところに風呂があるのなら、
そりゃもう最高かもしれない。
根石山荘を過ぎると、ふたたび樹林帯に入る。
箕冠山なる小ピークを越えると、ゆるやかな針葉樹林帯となる。
もっとも、それは登山道(稜線の西側)だけの話で、
斜面の東側は崩落している。
ゆるやかな登山道を黙々と下ると、
夏沢峠にある二軒の山小屋が現れた。
山小屋の背後には硫黄岳が圧倒的な存在感で聳えていた。
ここで、硫黄岳を往復するか否か、俺は思案した。
時間的にも、体力的にも、おそらく不可能ではない。
けれど、秋の日は短いということ、万が一のこと(怪我など)があった場合、
ちょっとリスクの高い時間帯かなと思い、諦めることにした。
また、来ればいいさ。
それに、ここまで来たら、他の目的もある。(笑)
多少後ろ髪を引かれながらも、本沢温泉方面に向けて下山する。
高度をさげるにつれ、紅や黄色の木々の葉が目につくようになる。
緑が目立ち、紅や黄色の占める割合は決して高くはないが、
その色はなかなか綺麗だった。
30分ほど下ると、本沢温泉に着いた。
この温泉、一度は泊まってみたいと思っていた。
今回は泊まらないが、いつかは泊まってみたいと思う。
露天風呂は小さそうだったが、天狗岳や硫黄岳を間近に望む
ロケーションは、写真で見るより魅力的な感じがした。
温泉には入らずに、少し休んだ後、ふたたび下山をする。
稲子湯に車を停めたので、当然、しらびそ小屋経由だ。
本沢温泉は標高2100m、しらびそ小屋は2040mに位置する。
なので、ゆるやかな下り道かと思いきや…、
しらびそ小屋に向かう道は上りから始まる。
あれれ…。
ちょっと意外だった…。
でも、地図をよく読めば…、やっぱりそうだよなぁ…。
針葉樹の森の中を歩いてゆく。
本沢温泉を出て間もなくの頃は、登山者とは全然遇わなかったが、
しらびそ小屋に近付くにつれて、登山者とすれ違うようになる。
時間帯からいって、すれ違った登山者は本沢温泉泊まりだろうか?
本沢温泉もしらびそ小屋もどちらも魅力的なので、
どっちに泊まるか、自分なら迷うかもしれないな。
小さな小川が流れ、木道が現れるようになると、
直にしらびそ小屋が現れた。
思ってたよりも小さな池の畔に建つ小屋は、
なんだかホッとさせるような雰囲気の小屋だった。
腹が空いたので、こちらの小屋で一休みし、ノンビリさせてもらった。
当初の目的の一つは、ここでノンビリすることであった。
その目的が果たせたので、硫黄岳に行けなかったことも帳消しとなった感じだ。
こちらでは次回宿泊!?の下調べをし、より色付いた森の中へと下り、
下界の人間となった。
森の中から岩稜へと顔を出し、ふたたび森の中へ。
色々な顔をした山の姿が見られ、なかなかに味わい深い山歩きだった。
今年は北アルプスにも南アルプスにも行けなかった。
本当は両方に行くつもりだったのだが…。
まぁ、色々とあったし、仕方あるまい。
けれど、最後に八ヶ岳で大展望が楽しめた。
これでよしとしよう。
また来る時もよろしくたのむよ。(笑)
コース・タイム
稲子湯(-/6:39)〜にゅう(8:40/9:08)〜東天狗岳(10:28/10:35)〜
西天狗岳(10:46/11:27)〜東天狗岳(11:38)〜本沢温泉分岐(11:50)〜
根石岳(11:57/12:10)〜夏沢峠(12:32/12:37)〜本沢温泉(13:03/13:11)〜
しらびそ小屋(13:53/14:34)〜稲子湯(15:18/-)