上高地ゆる旅 4 days(2日目)
夜中に目が覚めると、思いの外寒く、シュラフの口をできるだけ
すぼめて、あたたかさを逃さないでいた。
と言いつつも、目が覚める度にテントから顔を出し、
夜中に穂高をみていた。
月明かりのせいか、それを受けて穂高は
闇をバックに浮き上がり、妖しく綺麗だった。
テントの外に出ると、シショウ夫妻や、昨日知り合った
お隣さんのI夫妻やOさんも寒かったと口にしていた。
ゆるゆると朝食を食べ、今日は出掛けることにする。
徳本峠にするか?岳沢にするか?
明神、穂高の雄姿を眺めたく、徳本峠にする。
小梨平のテント村を出るとすぐに、道脇に人が群がる。
何かと思ったら、人々は猿の姿を見ていたのだった。
人混みの明神を抜けると、徳本峠への分岐。
ここからはめっきり人が少なくなるだろう。
昨日、明神〜徳澤間で熊が目撃されたという。
辺りにより気を配りながら歩くことにする。
分岐から少しの間は道も広く、林道っぽい。
上から年配の夫婦が下りてくる。
雪の状態が悪そうなんで引き返してきたと…。
そんなに悪いのか!?
とにかく行けるとこまで行ってみよう。
少し歩くと、雪が現れてきた。
ここから冬道で、この谷をつめるらしい。
しかし、なんとも心細い雪道だこと…。
下を流れる水の音がよく聞こえる。
踏み抜かないように、なるべく厚そうなとこを探して歩く。
また、ところどころに石が落ちている。
落石への注意も怠らないようにする。
少し登り、振り返ると…、
明神の雄姿。
これこれ!
これが見たかったのだ。
この先ずっと雪の道。
そんなに良くないけど、そんなに悪くもない。
あの年配の人達、登れば良かったのに…。
ストックがあれば、アイゼン無しでも行ける感じ。
行けるとこまで行ってみる。
谷をつめると、左に90°トラバース。
小屋の人達により、よく整備されている。
落ちたら勿論ヤバそうだけど、ここもアイゼンはいらないだろうと思い、
そのまま進む。
ちょっと行くと、峠の直下に出た。
小屋の周りには全然雪がなかった。
ベンチで休憩しようとしてたら、小屋の人がお茶していて、
紅茶を出してくれた。
ありがたい。
美味しくいただく。
小屋のみなさんと話をすると、船窪小屋の昨年のスタッフのしのぶさんの
お友達だったり、なんやかやと共通の知人の話が出て、
とても楽しい一時を過ごさせてもらう。
ただ、昨年船窪小屋に遊びにきたギリちゃんがいなかったのは残念だった。
昼飯代わりにおでんを注文。
行動中はまず飲まないビールも注文してしまった。
小屋周り、全然雪がなかった。
けれど、普段この時期なら1mくらいは積雪があるらしい。
今年は雪解けが早いんだなぁ…。
景色も天気もいいし、もっといたかったけれど、そうもしていられない。
雪がグサグサになるであろう前に下山することにする。
小屋のみなさんに挨拶し、下山。
この徳本峠小屋にもまたいつか泊まりにきてみたい。
峠より、明神〜穂高の稜線を見納める。
これが見たかったのだ。
古の人々もこの景色を眺め、上高地に下ったり、
これを見納めとして、島々に下ったりしたのだろう。
だんだん西穂が見えなくなって、下におりてきてしまったのだと
強く感じるようになる。
そのことに寂しさを感じながらも、足下に気をつけ、慎重に下る。
雪道を下りきり、静かな道を少し歩くと、もうそこは人で溢れかえる道だった。
明神も、行きの時よりも人で溢れかえっている。
道を塞ぐかのように並んで歩く連中を除けながら、俺は上高地に戻った。
テント場に戻ると、シショウ夫妻は未だ岳沢から戻ってなかった。
岳沢も案外雪山で、なかなか良かったらしい。
それならば、俺も明日と思ったが…。
明日は天気悪いだろう…。
夕方シショウ夫妻をターミナルまで送っていき、
その後はテントのお隣さんのOさんと酒を飲んだり、
I夫妻も交え夕飯を食べ、この日の夜は更けていった。
[コースタイム]
小梨平キャンプ場(-/8:40)〜明神(9:07)〜徳本峠分岐(9:10)〜
徳本峠小屋(10:25/11:58)〜徳本峠分岐(12:44)〜明神(12:47)〜
小梨平キャンプ場(13:15/-)