寅次郎がゆく!

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最後の姿

「重体です」
事務的で、抑揚の全くないA獣医の声が冷たく響いた。

やはり、午前中には全く連絡はなかった。
しかし、4時過ぎになって電話がかかってきたのだった。




”知らせが無いのは良い知らせ”だと信じていた。
だからこそ、精神的な疲れが激しい母は、
かかってくる電話全てに怯えていた。
電話がかかってくる=ジュリアの容体悪化を意味している
と思われたからだ。

電話を受けた俺は、「じゃあ、会いに行きますが、いいですね」ときいた。
有無を言わさず、会いに行く!と言わなかったのは、
A獣医からの電話があまりにも事務的で、
切迫感など微塵も感じられなかったからだ。

この後、A獣医は信じられない言葉を吐く。
「来てもいいですけど、ワンちゃんの命の保証はしませんよ。
興奮して、それが原因で死んでも構わないならいいですよ」

俺は耳を疑った。
重体なら、普通家族は会いに行くだろう!
それなのに…。
恐ろしいほど冷血な野郎だと思った。

急いで支度をすませて、我ら家族は高崎へと向かった。

ジュリアはケージの中に入れられていた。
右前足の毛が剃られ、点滴を打たれていたものの、
存外元気で、大きな声で吠えていた。

この時、『なんだ、たいしたことないやんか。元気じゃん。
元気なら良かった』等と俺は考えていた。

父と妹がジュリアとケージ越しに会っている時、
母と俺は、A獣医の病状説明らしきものをきいていた。

血液検査をしたところ、なんらかの数値がよくないこと、
おしっこがでないこと。(尿毒症の疑い)
そして、今日が”ヤマ場”だということ。
ただ、”ヤマ場”と言っても、必ずしも死を意味するわけではない
とAは言った。
そして、今後の治療方針として、肺水腫が治り切らないので、
それを治す為の点滴をすると言った。
ただ、これは心臓に負担がかかるんですよね、とも言った。
(しかし、それが原因で死ぬ危険性があるとの説明は一切なかった!)

母はボロボロになりながらも説明をきいていた。
俺も真剣にきいた。

必ずしも死を意味するわけではなく、助かる可能性も充分ある
という説明だったので、家族で協議し、もう一日ジュリアを
あずけることにした。

その間もジュリアは吠えていた。
もの凄い勢いで吠えていた。
妹曰く、「あんなに吠えるジュリアをみたことがないよ」という位に
凄い勢いで吠えていた。

その姿をみて、俺はすっかり勘違いしていた。
あ〜、元気じゃないか!と。

しかし、それが…遠い彼方に行ってしまうジュリアの最後の
動く姿だった…。

もしかしたら、あの時ジュリアは「帰りたいよ〜!帰りたいよ〜!
みんなと一緒にお家に帰りたいよ〜!」と訴えていたのかも
しれなかった…。

その言葉がわからなかったことは、今もずっと胸の奥深くに沈み、
俺の後悔の念を消し去ることは一生ないだろう。
あの吠えている姿とともに…。

ジュリア、助けてやれなくて…ごめんな…。

我ら家族は一縷の望みをAに託した。
獣医として、人間として、Aには大いに問題があるとは思ったが…。

我ら家族はジュリアに別れを告げた。
早く元気になれよ!家で待ってるからな!迎えにくるからな!と言って…。
それが…最後の別れになるとは知らず…。
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Commented by takebow at 2007-08-12 17:48 x
帰宅して最初に拝見したのが、残念なお話とは。。。
何とも言葉もございません。愛され続けた魂は決して無くなりません。いつも寅次郎さんご家族の周りにいます。間違いありません。
Commented by torajiro-joshu at 2007-08-12 20:31
>takebowさん、こんにちは。
おかえりなさい。帰宅されたんですね。
やはり関東は暑いでしょう。

すみません。
せっかく見ていただいたのに、いきなりこんな話題で…。

ブログ開設当初(昨年10月1日)、ブログにはなるべく楽しいことを書いてゆこうと思ってはいたのですが、やはり…この日が来たら、このことは書かないではいられなくなってしまいました…。

こんな話題にもかかわらず、コメント、やさしいお言葉ありがとうございます。
そんな風に言っていただけて、本当にありがたいです。
by torajiro-joshu | 2007-08-11 22:41 | 愛犬(パグ) | Comments(2)

私、寅次郎の好きな山、温泉、食べ歩き、愛犬(パグ)等に関して気ままに綴っていきます。


by torajiro-joshu