寅次郎がゆく!

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南岳〜西穂縦走(南岳小屋〜北穂高岳〜穂高岳山荘)

朝起きて、すぐに外に出ると、快晴だった。
信州側は一面の雲海で、富士山まで見えた。
常念平では、宿泊客がご来光を今か今かと待ち構えていた。
俺もそこに加わり、ご来光を待った。
昇り来る朝陽に向かって、今日一日の無事を祈った。

おいしい朝食をいただき、身支度を整え、出発。

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南岳小屋前の道標。雲海の向こうに富士山と南アルプスが仲良く並んでいる。





昨晩は何度も目が覚めてしまったものの、大イビキをかく人がいなかったので、
すぐに寝付くことができた。お蔭で体調も良さそうだ。

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獅子鼻に登り、振り返ると、南岳の向こうに槍が見えた。

獅子鼻に登る途中、昨日の夕食時に同席だったカップルと挨拶を交わす。
カップルは槍から双六へと向かう予定のようだ。
西穂まで縦走するという俺を心配してくれた。
お互いの無事を誓い合った。
一期一会。
茶人のような気分になった。

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緩やかな、ほんの少しの登り(獅子鼻)を越えると、そこから急降下が始まる。
その急降下の向こうには穂高の岩稜が待っている。

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大キレットに向け下降しながら、獅子鼻を見る。随分、端整な鼻だ。

獅子鼻の影になった日陰道を下っていく。
日向にいる時よりも明らかに体感温度が低い。
陰鬱な風景と冷たい空気が緊張感を高め、身が引き締まる思いだった。
対照的に、笠ヶ岳は日差しを浴び、ノンビリした感じ。
そのギャップに笑ってしまった。

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振り返ると…獅子鼻は凄い岩塊となっていた。

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コルから南岳を振り返る。南岳がどっしりと構えている。
ここはノンビリしていて別世界といった感じだ。

長谷川ピーク付近には大所帯パーティ等がいて、渋滞していた。
渋滞にハマるのもイヤだし、石を落とされてもイヤなので、
休憩することにした。
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信州側を見ると…谷の向こうには常念、下の方には池が見える。
北穂池だ!
いつかは行ってみたい。

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長谷川ピークより南岳方面を望む。歩いてきた道がはっきりと見える。

難所のうちの一つ長谷川ピークは、17年前よりもよく整備され、
歩きやすくなっているように感じた。
恐怖感は17年前の方が明らかに大きかった。
これが2回目のアドバンテージなのだろうか?
それとも整備のお蔭なのか?
年を取って感覚が鈍くなったとだけは考えたくない。(笑)

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長谷川ピークの下り。
高度感はあるものの、晴れていて風がなければ、
さほど困難なことはないように思われた。

A沢のコルで、先行のパーティに追い付き、立ち話。
男女2人のパーティは南岳小屋で知り合い、たまたま
同方向だったので一緒に歩いてきたのだったとのこと。
そう言えば、見かけたような…見かけなかったような…。
彼等に、この先のルートのことを訊かれたが、
17年前の朧げな記憶しか持ち合わせていないので、
アドバイスはできなかった。ごめんなさい。

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飛騨泣き。この写真ではたいしたことないが、かなりの高度感がある。

17年前に歩いた時は、一番ここが怖かった気がする。
けれど、ここもまたよく整備され、以前よりは怖いと感じなかった。

北穂高小屋直下の鎖と梯子が連続するところの取り付きまで
来ると大所帯パーティに追い付いてしまった。
途中で追い抜いた登山者から聞いた話では、彼等はかなりの要注意パーティらしい。
彼等が落石を起こすので注意したら、「しょうがねぇだろ!」と逆切れされ、
挙げ句の果てには、その後も何度も落石を起こすという危険なパーティとのことだった。
そんなパーティの後を歩いて、落石を起こされたらたまらないので、
取り付きで休んでいる他のパーティと話をして、”危険が通り過ぎる”のを待った。

それにしても、何と言う”自己チュー”なんだろう!
自分だけ良ければいいというもんじゃない!
落石を起こさずに歩くのも技術、マナーのうちだと思う。
全く落とさないに越したことはない。けれど、落としてしまう時もある。
そういった時はまず謝って、以後気をつけて歩くべきではないのか!?
それさえもできぬなら人のいる山には行くべきでないと思う。
分別あるべき中高年の登山者にそういった”輩”が意外に多いのは、
残念を通り越して悲しい。

そう言えば、南アルプス南部を縦走した時、登山者のおっさんに
飲み水を少しわけてやったことがある。
そのおっさんはその日入山してきたばかりと言っていたが、
「現在水を持っていない」という。
最初から水を持っていなかったのか、途中で水を切らした
のかはわからない。(前者だったと記憶するけど…。)
そこ迄、彼は登山口から最低でも4時間は歩いたのではないかと推測する。
それなのに水を持ってこなかったとは…山をなめるにも程がある。
喉が渇いたのだろう。
そこで、休憩して水を口にしている俺に「水を飲ませてくれ」というのだった。
その日、俺は水場のない避難小屋泊まり。
現在地から避難小屋までおそらく2時間。
避難小屋までの2時間、今晩・明朝の自炊用の水、避難小屋から
明日の水場までの2時間、今担いでいる2リッターの水で全てを
賄わなければならない。
正直言って、他人に分け与えられる程の水はなかった。
その時飲んでいるのも、雷が心配で避難小屋までフル・スピードで歩いていく
途中で、喉がカラカラになったのでチビチビ大切に飲んでいた貴重な水だ。
俺は次の水場まで約20時間、一方おっさんは1時間。
そのことはおっさんも話の中でわかっていた。
俺は少し悩んだ。
けれども、”袖振り合うも他生の縁”だし、”自己責任”とはいえ、
相手が困っているのだから仕方あるまいと水を差し出した。
すると、そのおっさんは俺の気持ちなど考えることもなく、
また遠慮することなど全くなく、ガバガバと飲んだ。
それに満足すると、「じゃあ」と言ったのみで、礼をのべることもなく、
とっとと反対方向に歩いていった。
悲しかった。
貴重な水が少なくなったことが、いや、それ以上に彼の行動が…。
あの時の記憶がリアルに甦った。

いくら自然の中にいるとはいえ、そこに自分以外の他者がいる以上は
その他者を気遣ったり、迷惑にならないよう行動すべきだし、
コミュニケーション能力が欠落したような振る舞いはすべきではないと思う。
これは自然の中に限ったことではなく、街にいても同じだけど…。

あの時のおっさん、今回の大所帯パーティに年齢が近づいてきて、
尚更、「ああはなりたくない!」と強く思う。
彼等の行動を他山の石としてゆきたい。

落石に巻き込まれないように微妙な距離感を保ち、最後の急な岩場を登る。
途中から小屋のテラスが見え始める。
それを目標にグングン登る。
後半は少々キツかったが、無事到着。
今日は行程が短いので、ここで大休止することにする。

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北穂高小屋より槍ヶ岳を望む。
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北穂高小屋より前穂を望む。カール下には涸沢ヒュッテが見える。

北穂高小屋のテラスからは素晴らしい景色が広がる。
正に絶景だ。
本当は、この極上の景色を肴にビールといきたいところだが、
まだまだ険しい道は続く。やめておく。
その代わりに北穂ブレンドをいただく。
お台場のオシャレな店で飲むより、遥かに美味かった!(笑)

ここで嬉しい再会があった。
かなりの〜んびりしたので、そろそろ穂高岳山荘に向かおうと席を立つと、
昨日、少しの間だけ一緒に歩いた松本在住の方が…!
お互いに「あれ〜っ、どうも」とハモってしまった。(笑)
その方は早朝に槍ヶ岳山荘を出てきたらしいが、まさかここで
会うとは思わなかった。槍沢下山の予定らしかったし、
それにしても…健脚だ!足の運びが違ったものなぁ。
その方はコース変更し、槍ヶ岳〜南岳〜奥穂〜岳沢〜上高地という
ルートで下山することにしたらしい。
う〜む…、それにしても、健脚だ。
せっかくなので、再び座り、暫し談笑した。
すごく楽しい一時を過ごさせていただいたが、あまりにも
テラスに長居したので、そろそろ歩き始めることにした。
ちなみに1時間半以上テラスにいた。
盛夏なら、こんなノンビリは考えられない。
安定した天気に感謝する。

松本の方より一足先に立つ。
小屋裏の山頂で記念写真を撮る。
正確には他の登山者の方にシャッターを押していただく。
単独行のツライところはここだ。
いつも風景写真ばかりで、自分が写ってる写真はほとんどない。

北穂〜穂高岳山荘も甘い道ではない。
気を引き締めていく。

翌日の奥穂〜西穂の練習として、少々飛ばし気味に歩いてみる。
明日の天気次第では、そういう状況がないとは言えないと思ったからだ。
景色を楽しみながら黙々と歩いていく。
大キレットよりはプレッシャーが少なく、とても楽しい。
どういう巡り合わせか、そろそろ休もうかなと思うと、
適当な場所がなく、先行する登山者に追い付いてしまう。
そうすると道を譲られ、歩き続けることになる。
せっかくだからと歩き続けてゆくと…穂高岳山荘が見えてきた。
いつの間にか、涸沢岳直下迄来ていた。
17年前より30分以上早く着いていた。
明日は行けるのではないかと内心思った。
涸沢岳直下に荷物をデポし、ザックをガサゴソやっていると、
松本の方がやってきた。
後方から俺の歩きをみていてくれたらしく、「奥穂〜西穂は大丈夫だよ」と
太鼓判を押してくれた。
「西穂山荘迄なら、その歩きなら6時間で行けるよ。
今からでも行けちゃうよ」とも言ってくれたが、
それはあまりにもリスクが多過ぎる気がして、笑って聞くのみだった。
俺は涸沢岳頂上へ、松本の方は穂高岳山荘へと向かっていった。
「お気をつけて!」と言葉を交わし。

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涸沢岳頂上より。小屋はもうすぐだ。

奥穂、前穂が雲に隠れたり、現れたり。
ジャンダルムも見えた。
明日への期待と不安が交錯する。

頂上でノンビリし、小屋に着くと、松本の方が昼飯を食べていた。
再び話をして、お互いの安全を願い、いつかまた山での再会を願い、
奥穂への道を登ってゆく姿を見送った。

不思議なもんだ。
昨日迄見ず知らずの、年も離れた人間同士が旧来の友のように思える。
それは月日が経っても、そう思える。
単独行は独りで行くけれども、決して独り=自己の殻に閉じ籠る
ことではなく、他者の中で自己を認識、確認させられることが多い
ように思える。
独りになって、自分は独りじゃないと知る。
独りじゃないから、帰るところがあるから、
俺は独りになれるのだろうか?
そんなこと考えながら、小屋の岩畳の上から山並を見ていた。

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小屋裏からジャンダルム。

宿泊の受付を済ませ、小屋裏に出てみた。
青空の中にジャンダルムが浮かんでいた。
明日も晴れてくれ!

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小屋の岩畳の上に…。

面白いマークがあった。
なんとなく、NYのストロベリー・フィールズを思い出した。
ここにも誰かの願いが込められているのだろうか?

部屋に戻り、隣の登山者の方と話した。
北海道から来た3人パーティの方だった。
今日は西穂山荘から来たとのこと。
ルートのアドバイスをいただいたり、北海道の山の話をしていただき、
夕食まで楽しく過ごす。

穂高岳山荘の夕食も美味しかった。
おかずの量もかなりあったし、満足できるものだった。

夕食後、夕日を眺めに小屋裏に出る。
陽は静かに笠ガ岳の向こうに沈んでいった。
明日はきっと晴れるだろう。

ロビーで見たテレビの天気予報も明日は晴れと告げていた。
嬉しい気持ちになった。

天気予報の後、穂高岳山荘のビデオ上映となった。
北海道の方にコーヒーをご馳走になりながら観た。
小屋のドキュメントといった感じのもので、なかなか面白かった。

21時の消灯に合わせ、横になる。
この時俺は、これから始まる地獄を全く予想できてはいなかった…。



3日目へと続く


コース・タイム 
南岳小屋(-/6:30)〜長谷川ピーク手前[2760m付近](7:25/7:35)〜
A沢のコル(8:11/8:16)〜北穂高小屋(9:16/10:51)〜
涸沢岳(11:53/12:19)〜穂高岳山荘(12:29/-)
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by torajiro-joshu | 2006-09-03 22:39 | 山歩き | Comments(0)

私、寅次郎の好きな山、温泉、食べ歩き、愛犬(パグ)等に関して気ままに綴っていきます。


by torajiro-joshu