雪の中へ、風の中へ…。〜残雪期槍ヶ岳山行〜(3日目) 1/2
けれど、昨日よりは弱そう。
夜明け前、外に出てみる。
晴れだ。
静寂が心地いい。
槍の肩の向こうには八ヶ岳が見えた。
夜明け前の青い感じが好き。
徐々にそれは紫やピンク、オレンジの帯をまとう。
より一層オレンジが濃くなり、
太陽が顔をのぞかせた。
大喰や前穂は薄いピンクに染まる。
遠くに富士山、南アルプスが見えた。
常念の上を飛行機雲が斜めに綺麗なラインを描く。
朝飯前に、早くも穂先に取り付く人がいる。
幾重にも重なる山並みが綺麗。
槍は早くも賑わいを見せ始める。
昨日、登ったからいいや。
俺は完全に傍観者。
間違いなく絶景を目にすることができそうだが、
登る気すら起きない。
常念が相変わらず男前。
今日は、この谷底を下山。
スキーならば、さぞかし速いことだろう。
下の雪田の左に、昨日は気付かなかった梯子が見えた。
昨日のベテラン登山者は、あれのことを言ってたんだと思った。
夜明け前からずっと、サンダル履きでカメラを持って外に出ているので、
さすがに足先がジンジンしてきた。
Sさん、Mさんのパーティはすぐに下山に取りかかるらしい。
いつの日かの再会を誓い、パーティを見送った。
見送ってからも、物好きは外に出たまんま。
寒いのに、ホント、物好きだ。
Sさん、Mさんのパーティが殺生へと下ってゆくのが見える。
あっという間に米粒みたいになった。
再び、富士山と南アルプス。
長く見ていても飽きなかったが、そろそろ自炊して、
出発準備を整え、下山しなければ…。
槍ヶ岳山荘は、自炊部屋が提供され、そこで食べていいということだった。
冬期小屋で自炊、食事だが、外よりもマシだ。
ありがたい。
おまけに、冬期小屋は冷蔵庫みたいということもあるのだろうが、
ストーブも焚かれている。
本当にありがたい。
槍沢ロッジも槍ヶ岳山荘も同じグループの筈なのに、何で!?
槍沢も建物内で食べさせてくれればいいのに…。
出発準備を整え、相部屋の人に挨拶してから下山。
テラスからまわりの山々を眺め、それを心に刻み込んだ。
(3日目) 2/2に続く。