寅次郎がゆく!

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雲ノ平山行 4日目(雲ノ平〜三俣蓮華岳〜双六小屋)

夜明け前に瞬いていた星は、曇天の空の向こうに隠れた。
薄らと明るくはあるが、低く重く、雲が垂れ込めている。

曇天の空の下ではあるが、せっかくなので、雲ノ平を散策することにする。
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出発時には、斜面に咲いたテントの花もグッと少なくなっていた。





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キャンプ場分岐に荷物をデポし、昨日と同じ道を雲ノ平山荘へ…。
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どこに行ったか?すれ違う登山者は極めて少ない。
静かな木道上を歩く。

雲ノ平山荘を抜け、祖母岳まで往復。
アルプス庭園と呼ばれる祖母岳周辺は、言われてみれば、
たしかにアルペン的な風景がとても綺麗だった。
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薬師岳は雲の中。
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祖母岳中腹より山荘方面を望む。

のどかな風景が実にいい。
やはり、雲ノ平は一日停滞して、のんびりじっくり楽しむべきだったかもしれない。
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曇天ではあるが、時折射す薄日に反射する、
濡れたチングルマの花柱がすごく綺麗だった。

贅沢を承知で言えば、この花柱はもちろん綺麗だが、
チングルマの花が咲き誇る時期にここに来たら、
さぞかし壮観な光景だったことだろう。

キャンプ場分岐に戻り、ザックを背負って、先ずは、いざ三俣山荘へ…。
そこでは絶景の槍〜穂の稜線とケーキセットが待ってる筈。(笑)

ザックを背負ってからほとんど経っていないのに、
キャンプ場分岐からほどなくのところにある、スイス庭園に早速寄り道。
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水晶池と思しき池が見えていた。
あそこにもいつか行ってみたい。
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祖父岳に向かう途中の谷。
岩苔小谷支流の上流と思われる。

穏やかそうな表情がいい。
黒部五郎のカールと同様に、綺麗な感じだった。

祖父岳分岐付近より、白いヴェールを被った雲ノ平に別れを告げる。

その後は、更に白くなった道を、晴れを期待しながら歩く。

すると、ピピピだかなんだか鳥の鳴き声!?
注意して周囲を見渡すと、それは、果たして雷鳥だった。
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親鳥が雛を5羽引き連れていた。

おそらく、雷鳥が前方左から右に横切った時に、俺が気付いたのだろう。
右手の草地に入り込んだ彼女達を驚かさぬように写真を撮り、立ち去った。
元気に育てよ!と願いながら…。

久々に雷鳥を見られて、すごくラッキーだった。

ガスの中の山歩きは退屈だったが、また雷鳥親子がどこかで出て来ないものかと、
一転して、期待に胸をふくらませるものとなった。
(ゲンキンなものだ…。)

ガスの中、第一、第二雪田を過ぎ、
昨日見た祖父岳からの下りをゆく。

眼下に渡渉点があり、下れば下る程そこが近付いてくるので、
それを励みに一気に下ると、あっけなく着いてしまった。

下るのは簡単だけど、下った分それなりにまた登り返すわけで、
それはそれで大変である。
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黒部源流の渡渉点。
手前のロープのあるところを渡る。

この時は、別になんてことなかった。
けれど、雨の降ってる最中や、その直後はイヤらしいだろう。
(というより、危険か…。)
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黒部川水源地標の石柱。
渡渉点から三俣山荘方面に登ると、間もなくのところにある。

それを見て、「ああ、ここが黒部の源流なのか!」と再認識させられる。

結構山奥まで来たんだなぁ…。
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黒部川源流を振り返る。

ほんの少し前まで、ハイマツを見ながらの歩きだったのに、
気付けば、いつの間にか、ダケカンバが繁る、谷間の道となっていた。

丁度、森林限界付近での上下ということであろうが、
この辺の植生の移り変わりが、実に楽しい。

岩岩した奥穂〜西穂(の手前)の稜線なんてのも最高に楽しいが、
こちらはこちらで味があり、なんとも趣深い。

一気に下った後の登り返しはちょっとキツいかなと思っていたが、
それほどのことはなく、ふたたびハイマツ地帯に戻る。
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昨日三俣山荘に来た時よりも明らかに雲が多い。

鷲羽の頂上も、見えたり隠れたり…。
待望の槍〜穂の稜線は…、照れ屋なのか?ずっと出てくることはなかった。

それでも、せっかくだからと、三俣山荘のウリである!?絶景の喫茶室でお茶をする。
カウンターに座らせてもらい、槍〜穂の顔見せを願ったが、
遂にそれは叶わなかった…。

展望は望めなかったが、そこが山奥であることを忘れるような、
とてもウマいコーヒーとケーキが最高だった。

いつか、またここに来よう。
今度は絶景を味わいながらのお茶をする為に…。

今後の天気を確認してから小屋を立とうと思い、受付に行って、それを確認。
出発の際に挨拶すると、綺麗な女性スタッフが笑顔で「いってらっしゃい」と…。

「あっ、どうも…」
それしか答えられなかった。
気のきいた答えなど、俺にできる筈もないか…。

ここに来る理由がまた一つ増えた!?
「いってらっしゃい」と言われたら、そこに帰らなきゃだもんな。(笑)

三俣山荘付近もまた風の通り道であるらしく、
吹き抜ける風が強かった。

フリースを一枚着込んで歩き出したが、
登る途中で暑くなり、というより、風が弱くなり、
かえって暑過ぎるくらいになったので、それを脱いで、
身軽になって歩く。

アルプス級の山では、お盆を過ぎれば徐々に秋の気配が漂うと言われるが、
その通り、風も空も花も、徐々に秋の気配を纏いつつあった。

三俣蓮華の頂上はガスに包まれ、何も見えなかった。
ガスは濃く、展望は期待できそうにない。
あっさりと諦め、双六岳へと、稜線通しに進む。

ガイドには「雷鳥多し 別天地の雰囲気」と書いてあったが、
雷鳥は全く見られず、ガスが比較的濃く、別天地の気分も味わえなかった。
それでも、登山道脇には高山植物が多く、それらを愛でながら、
写真に撮りながらして歩いた。
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双六のカールもなかなかだった。

黒部五郎のカールほどの迫力はなかったが、それでもなかなかいい雰囲気で、
機会あらば、こちらのカールも歩いてみたい。
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双六岳の頂上はもうすぐ。

晴れていれば、稜線漫歩といったところだろうが…。

頂上への最後のひと登りを前にして、足が動かなくなる。
足が前に出ない…。
いや、出したくないといった方が正確か…。

「遠足は家に帰る迄が遠足」と、よく言われる。
山歩きも然り。
山歩きも家に帰る迄が山歩きなのだ。
しかも、無事に…の条件が付く。

そうであるならば、今日の、この双六岳の登りが、
今回の山行の終わりである筈は全くない。

けれど…、俺の中では、今山行はここで終わったように感じていた。
今山行における、主たるピークはこれで終わり。
あとはもうただひたすら下るだけ、帰るだけのような気がしてた。
本来は、家に帰る迄が山歩きなのだが…。
双六の頂を越えたら、長年持ち続けた、その思いが消えるような気がしてた。

寂しかった。
そこに行けたという充足感よりも寂寥感が、俺の心を埋め尽くした。

少年の日の俺には、奥穂〜西穂が大きな一つの目標だった。
それは、技術的、体力的な意味での、自分の目指す山だった。

そして、もう一つ、単なる憧れのような思いを
抱いていた山域が雲ノ平だった。

その少年の日の思いが、漸く完結することになった。

奥穂〜西穂を縦走した時も感じたが、思えば、長い月日が流れてしまった。

本当に来る気があったのなら、もっと早く来れたのではないか?という思いと、
今来たことに意味がある!との思いが交錯する。

立ち止まり、暫し、沈思黙考する。

答えは…、出よう筈もない。
全ては、たら、れば、の話なんだから…。

雲が空を覆い尽くしていた。
俺の心境の如く、クリアーなものではない。
ただ、その向こうには、間違いなく、青空がある。

同様に、答えは、交錯する思いの向こうにきっとある。
俺にはわからないけれど…。

こみ上げる思いがあった。
過ぎ去った日々に対する感傷的な思いが、そんな気分にさせたのかもしれない。

今が全て。
そして、全て必然。
偶然という名の必然。

人は、時の中を泳ぐ魚。
時に流され、時に自ら泳いでゆく。
そこに何があるかはわからない。
ただただ、ひたすら生き抜くだけ。
自分を信じて生き抜くだけ。

重くなった足を、軽くなった心が前に進める。
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漸く双六岳の頂上に着く。

真っ白で何も見えない。
諦めて、すぐに双六小屋に向かおうと思ったが、
ここからの槍が見たく、暫く待ってみる。

頂上で知り合った愛知からの男性や、雲ノ平からちょくちょく顔を会わせた
千葉のスキーヤーの方と一緒に大展望を待ってみる。
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硫黄尾根までは見えるが、どうしても槍の姿は見えない。

時折、笠ヶ岳も姿を現していたので、何の根拠もなく、
槍〜穂の姿をずっと待っていたのが、果たして、それは
ついぞ現れることはなかった。
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遠くに燕や餓鬼、唐沢までも見えていたのだが…。

双六小屋から登ってきたキャンパーが、テント場が結構賑わっていると言う。
もしかしたら、今日はいっぱいかも…などと話すこともあり、
これが潮時と、頂上から去ることにする。

俺は、見られる限りの景色を心におさめ、下山する。

さらば、少年よ。
少年の日よ、さらば。
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丸みを帯びた台地状の頂稜美しい。

頂上から下り、一旦そこを登り返し、あとは下るだけ。

途中、キャンプ場が見えた。
……。
そんなに混んではいない…。

まぁ、いいだろう。
早く着くに越したことはない。

俺は休まずに下っていった。

テントを張り、またしても生ビールとラーメンを堪能して暫くすると、
風雨を伴う雨が降り始めてきた。
今山行で一番強い雨…。

明日まではなんとか天気がもつそうだから、これは俄雨だろう。
テントの中で、俺はじっとやり過ごした。

一旦雨が止んだ時に景色を見に、小屋の方に行ったが、
生憎、ガスが消えぬままだった。
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夕暮れ時の双六岳キャンプ場。

晴れていれば、池の向こうに笠ヶ岳が見えるらしいが…。

ガスっていて、しかも、風があり、結構寒い。
山は確実に秋に近付いている気がした。

明日は下山。
朝方は曇りだが、昼過ぎから晴れの予報。
鏡平での好展望を期待して、眠りにつく。



[コースタイム]
雲ノ平キャンプ場(-/6:16)〜キャンプ場分岐(6:22/6:25)〜雲ノ平山荘(6:35)〜
祖母岳(6:48/6:51)〜キャンプ場分岐(7:15/7:22)〜[スイス庭園に寄り道]〜
祖父岳分岐(7:51)〜第一雪田(8:13)〜黒部源流渡渉点(8:37/8:50)〜
三俣山荘(9:20/10:06)〜三俣蓮華岳(10:53/10:58)〜双六岳分岐(11:33/11:40)〜
双六岳(12:05/13:00)〜中道分岐(13:16)〜双六小屋(13:23/-)
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Commented by でん at 2011-08-26 23:52 x
寅次郎さん、まるで詩人になったようですよ!
山歩き、そしてブログ書くのもお疲れ様でした。
とても楽しく読ませていただき、ありがとうございました(^^)
Commented by けろぼうず at 2011-08-27 03:41 x
四半世紀越しの夢の実現おめでとうございます。
素晴らしい山歩記、楽しまさせて頂きました。

夢実現の後の寂寥感は何となくわかります。
もう子供でなく大人になっていたということですね。
経験ある大人だからこそ抱く複雑な感情も、ある意味
素晴らしいことだと思います。

美空ひばりじゃないけど、川の流れのようにゆるやかに
時に身を任せ人生を旅していきたいですな。
Commented by くに at 2011-08-27 07:40 x
虎次郎さんの思い、伝わってきましたよ
ガスの中で、少し残念でしたね
それでも、夢の実現おめでとうございます

山は、実際歩いてるとき、楽しいですが
計画してるときが一番楽しいかもしれないと 良く思います
いつも思う帰りたくな~い の気持ち
最終日はつらいですもんね
お疲れさまでした
Commented by takebow at 2011-08-27 18:22 x
今年はテントで単独行が多いと伺っていたのですが、本当のようですね。雲ノ平であの数はすごいです。天気も何とかもって良かったぁ。このコースは雷鳥さんが多いんですよね。寅次郎さんの写真の台地(ドーム)の向こうに(心の眼に)槍が見えています。素晴らしいです。
Commented by torajiro-joshu at 2011-08-27 20:43
★でんさん、こんにちは。
ハハハ…。
ありがとうございます。

基本的に、その時感じたことを素直に書こうと思ってます。
その結果、こんな感じになりました。

5日目も、内容が今迄よりも薄いですが、なんとか続きます。
Commented by torajiro-joshu at 2011-08-27 20:52
★けろぼうずさん、こんにちは。
どうもありがとうございます。

いや〜、実際に行く迄、長い月日が流れてしまいました…。
でも、これも山歩きですよね!?
この機会に行けたことに、きっと意味があると思います。
きっときっと、これで良かったんです。

>美空ひばりじゃないけど、川の流れのようにゆるやかに
時に身を任せ人生を旅していきたいですな。

起こった事象全てを受け入れる程、自分は強くはありませんが、
なるべくそうありたいとは思いますね。
Commented by torajiro-joshu at 2011-08-27 20:55
★くにさん、こんにちは。
どうもありがとうございます。

イマイチな天気は、本当に残念でした。
けれど、これも山歩きですね。

今回、自分も山から下りたくなかったです。
計画段階も楽しいですね。
計画では、いつも好天だし…。(笑)

ブログは、あと一日続きます。
Commented by torajiro-joshu at 2011-08-27 21:03
★takebowさん、こんにちは。
たしかに、単独行の人は多かったかもしれません。
あとは、意外に、若いカップルも多かったと思います。

雲ノ平キャンプ場も、テントでいっぱいでしたね。
自分は比較的早い時間に到着したので、
サイト選択の余地がありましたが…。

天気はまぁまぁだったんでしょうね…。
欲を言うなら、もっと綺麗に晴れて欲しかったですが…。

雷鳥は…、残念ながら、一家族にしか遇えませんでした。
もっと遇いたかった〜。

>寅次郎さんの写真の台地(ドーム)の向こうに(心の眼に)槍が見えています。素晴らしいです。

う〜む…。
本音は、この目で見たかったです…。
Commented by あひる at 2011-08-28 21:55 x
確かに雲ノ平はゆっくり滞在したい所です・・・
少しモヤった雲ノ平も幻想的な感じがしますね。

それにしても往路に稜線を通ったのは大正解でしたね。
次回(?)は三俣山荘喫茶室からの眺めと、
薬師沢からの急登も是非ご堪能下さい。

さらば少年の日よ・・・
「銀河鉄道999」を思い出しました・・・
でも寅次郎さんにはまだまだ沢山行く所がありますから
もっともっと先に進まなきゃ。
Commented by torajiro-joshu at 2011-08-29 20:33
★あひるさん、みたびこんにちは。
たしかに、この日の雲ノ平は幻想的ではありましたけど、
やはり、晴れが良かったです。(涙)

晴れた雲ノ平で1〜2日のんびり過ごしたり、
高天原温泉に行くってのがいいでしょうね。

結果的には、今山行は、このルートで良かったんでしょうね。
とても楽しかったです。

三俣山荘喫茶室、俺的には、最高に贅沢なところだと思います。
あの風景を見ながらお茶なんて、最高ですよね。
次回は…って、行けるのか!?俺…。

薬師沢ルートか…。
行けたら…ですね。
アプローチが、やはり、キツいですもんね。

少年の日は過ぎ去ってしまいましたが、
元気なおっさんとして、山歩きは今後も続けます。(笑)
是非、また御一緒して下さいね。

「999」、懐かしい〜!
ゴダイゴの、あの歌が聴きたくなりました。(笑)
by torajiro-joshu | 2011-08-16 23:59 | 山歩き | Comments(10)

私、寅次郎の好きな山、温泉、食べ歩き、愛犬(パグ)等に関して気ままに綴っていきます。


by torajiro-joshu