雲ノ平山行 2日目(薬師峠〜黒部五郎小舎)
昨晩寝る前にテントから見た星は、今日の晴れを約束してた。
今朝テントから顔を出すと、雲一つない空が広がっていた。
昨日お世話になった広島の男性は、今日は五色ヶ原方面へと向かう。
いつかまた山で会うことを願い、また山行での無事をねがい、
お互い、それぞれの方向へと歩いてゆく。
今日は黒部五郎岳を目指す。
先ずは、昨日通り過ぎた太郎平へ…。
テント場から小さなピークを越えると、黒い稜線の向こうに槍ヶ岳が見えた。
今山行ではあそこ迄は行かない。
けれど、あの手前迄行くのだと思うと、気分が少し高揚した。
コンパクトにまとまった山域という印象だったが、
実際に歩く距離はなかなかある。
太郎平への道はなだらか。
鼻歌が出そうなくらい気分のいい高原のルートといった感じだ。
小屋の脇を通り抜けようとすると、小屋のスタッフだろうか?
みんなでラジオ体操をしていた。
それを横目に、なだらかなルートを登ってゆく。
なだらかでやさしい感じのする太郎山には誰もいない。
忘れ去られたように静かだった。
それにしても、気持ちのいい稜線だ。
北アルプス的ではない!?丸みを帯びた稜線は、
気持ちを穏やかにしてくれそうな感じがする。
その稜線を楽しみながら、周りの山々を見遣る。
雲ノ平を囲むように並ぶ、赤牛〜水晶〜鷲羽〜三俣蓮華〜双六。
その向こうには、やはり、槍が見える。
最高の展望だ。
本日目指す黒部五郎岳(写真左)の右手には笠ヶ岳も見える。
青空の下での稜線漫歩、楽しくて、自然と笑みが溢れる。
叶うならば、ここでキャンプをしたい!と思えるような、
広くて、なだらかな稜線。
登山道脇に咲く、高山植物も綺麗だ。
黒部五郎岳が、左には槍ヶ岳、右には笠ヶ岳を従え、鎮座する。
あと一日日程に余裕があれば、そのどちらかに縦走してみたかった。
まぁ、でも、それは贅沢な考えというものか…。
流れる雲に見え隠れする槍が、かえって存在感を浮き立たせる。
振り返ると、薬師岳の影に劔が姿を見せる!
こちらも凄い存在感。
時間と金に余裕があれば、劔も含めて縦走したかった。
これまた贅沢な考えか…。
北ノ俣付近の稜線をゆく登山者。
のんびりした感じの稜線が、実にいい。
石川県側には雲海があり、その向こうには、遠く白山が浮かんでいた。
いくつもの小さなピークの向こうに黒部五郎岳がある。
必然、アップダウンも多い。
緩やかだが、なかなか一筋縄ではいかない、渋い山である。
北ノ俣方面を振り返る。
その、幾重にも重なるなだらかなピークは、穏やかな表情をしつつ、
なかなかのアルバイトを強いる。
涼しいからいいものの、これが盛夏の下での歩きだったら、
結構キツいかもしれない。
黒部五郎岳に取り付く手前のコルに来る頃、ガスが濃くなる。
先ほど迄見えていた頂上付近は、全く見えなくなった。
風もそこそこ出てきて、止まっていると、薄ら寒い位になる。
わかってはいるが、山の天気は変わり易いことを、
改めて感じさせられる。
思ったよりも急な道を一歩一歩着実に登る。
ここでも涼しさの恩恵に与りながら…。
これで、頂上に着いたら晴れ!なんていうのがベストだな等と
考えていると、上空から青空がのぞくようになる。
稜線の分岐点付近に近付くと、完全に青空が戻ってきた。
青空に白い雲、白い石、ハイマツの緑が実に鮮やか。
今朝方感じた秋の気配の空から、再び夏の気配の景色となった。
頂上手前の分岐に荷物をデポし、軽装で黒部五郎の頂上へ…。
黒部五郎頂上にて…。
標識の向こうには、水晶岳がどっしりと聳える。
頂上に着くと、先ほどのガスが嘘のように、上から強い陽射しが照りつけた。
水晶〜赤牛の稜線が良く見える。
生憎、槍ヶ岳方面は雲に隠れ、望むことができなかったけれど…。
まぁ、夏山とはそんなもの。
致し方あるまい。
それにしても、頂上はかなりの賑わいだった。
結構登山者がいた。
アプローチはよくないのに…。
それは百名山だからなのか、展望の良さからなのかはわからない。
ただ一つ言えることは、長いアプローチの果てに来る甲斐のある、
そんな趣のある山だということであろう。
カールが美しい。
そのカールを縫うように、登山道が拓かれている。
黒部五郎小舎まではあと2時間弱。
おそらく、無理をすれば、その先の三俣山荘のキャンプ場まで
行けないことはないだろう。
そうすれば、翌日以降の山歩きに選択肢が広がる。
けれど…。
無理をすることによるメリットとしないことによるそれを比較衡量。
そして、当初の予定通り、自分の中の夏山の行動原則、またキャンプ場の混雑予測から、
黒部五郎小舎のキャンプ場に本日は世話になることに決める。
北ノ俣岳辺から相前後して歩いていた鴻巣の男性とはこの時
なんとなく親しくなり、翌日前半、一緒に楽しく歩かせてもらうことになる。
水晶岳の手前に雲ノ平が広がり、そのキャンプ場も望むことができた。
明日、水晶岳にはおそらく行けないが、念願の雲ノ平へ遂に行ける。
そして、あそこでキャンプするのかと思うと、少しワクワクした。
赤牛岳もなかなかの存在感。
これまたアプローチが悪いが、いつかあそこも歩いてみたい。
ただ、かなり長い尾根だから、荷物を軽くし、速攻スタイルになるだろう。
黒部五郎岳から黒部五郎小舎へとダイレクトに行ける稜線。
なかなかの迫力で、そっちも歩いてみたかったが、
綺麗なカールを歩いてみたく、また、花も期待して、
カールからのルートをとる。
巨岩が散在したり、堆積したり…。
こんな超巨大な岩はどうしてこんな所に…!?
大きなヒビが入っているけど、割れて二つになることはないのか!?等と
考えながら歩く。
それにしても、黒部五郎カールは、かなりの迫力。
歩いていても、実に楽しい。
今更ながら、自分がカール好きということに気付く。
薬師岳のカールも間近に見てみたいが、
できれば、また本谷に行って、今度こそ紅葉の絶頂期の
本谷カールを堪能したい。
北ノ俣方面から見た黒部五郎岳はやさしい感じがしたが、
カールの側からみると、やはり、かなりの迫力。
氷河が抉った名残を感じさせる。
振り返ると、薬師岳も未だ顔を見せていた。
高原の綺麗な小屋といった風情の黒部五郎小舎。
実際、こざっぱりとした綺麗な小屋で、スタッフの感じもよく、
機会あらば、いつか泊まってみたいと思えるような小屋だった。
丁度いい頃合いに着いたので、本日の行動は、予定通り終了。
テントを立てた後、小屋で生ビールとラーメンを堪能。
その後、間もなく到着した鴻巣の男性と、お互いの翌日の山行予定を
話し合ったりしながら楽しく過ごした。
明日は念願の雲ノ平入り。
明日は終日好天に恵まれますように…。
[コースタイム]
薬師峠(-/6:20)〜太郎平小屋(6:38)〜太郎山(6:48/6:51)〜
2576mピーク(7:38/7:54)〜神岡新道分岐(8:15)〜北ノ俣岳(8:21/8:29)〜
2570m付近(10:02/10:21)〜黒部五郎岳頂上下分岐(10:58/11:03)〜
黒部五郎岳(11:11/11:25)〜黒部五郎岳頂上下分岐(11:30/11:40)〜
黒部五郎小舎(12:50/-)